無名抄~都立高校入試ミス発覚~

2月21日、都立高校の入学者選抜検査が行なわれた。
当然、僕の勤務校も入試を行い、22日と24日には採点業務があった。

採点も一通り終わり、点検作業が大詰めとなった24日午後、校長から作業の中止が告げられた。
なんでも、出題にミスがあったというのだ。
都立高校の入試は、一部の進学校などで自校作成問題を用いる場合を除いて共通問題を使用している。
なので、あまり出題のミスといったようなことは起きない。

もちろん、採点のミスはしばしば起きている。
2014年に都立高校で採点ミスが大々的に発覚し問題となったことがある。
それ以来、入試問題は一部がマークシートとなった。
国語の場合も、記述問題がかなり減らされた。
今回の入試問題では200文字の記述問題が一問あっただけである。

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今回ミスが発覚したのは、国語の問題であった。
ちなみにマークシートの部分だったので、僕ら教員は採点には関わっていなかった。
ミスがあったのは古文の問題である。
鴨長明の「方丈記」に関する対談を読んだ後に、同じ長明の「無名抄」の原文と訳文が載っている。
その訳文からの出題だ。


4 問5
かならずやとあるが、この言葉が直接かかるのは、次のうちどれか。
  ア 名人で
  イ いらっしゃるに
  ウ 違いない
  エ 申すのです


模範解答は「イ」となっているが、「適切に一つの選択肢を選ぶことのできない問題」であったというのだ。

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副詞の呼応の問題である。
もう少し詳しく見てみよう。
該当する文の全文は次の通り。

   あなたはかならずやこの先の世の中で歌の名人でいらっしゃるに違いない上に、このように師弟の約束をされたので申すのです。

ここだけ読むとなるほど「イ」で問題なさそうである。
原文の方はどうなっているのか。

   そこはかならず末の世の歌仙にていますかるべき上に、かやうに契りをなさるれば申し侍るなり。

これだと、かかっている部分が「いますかるべき」となる。
ところが、これを訳すと「いらっしゃるに違いない」となってしまう。
「べき」(基本形「べし」)は「当然」の意味の助動詞なので、「~に違いない」に当たる。
助動詞は付属語だから、自立語である動詞「いますかる」(基本形「いますかり」)と分けることは出来ない。
だから厳密に考えると、ここでの正解は「イ」と「ウ」の両方でなくてはいけない。


現代語訳でなく、原文の方に傍線を引いておけば、問題は起きなかったかと思われる。
おそらく採点中にどこかの学校の先生が気づいたのだと思うが、
実は僕の勤務校でも国語教員の間で、「この問題わかりづらくない?」という指摘があった問題だった。


東京都では結局この問題について、全員に5点をあげるということになった。
そうなると受験生の得点が変わり、順位が入れ替わる可能性が出てくる。
僕の勤務校では作業中断となったが、学校によっては作業が全部終わり合格者も確定させ、3月2日の合格発表の準備が進んでいたはずである。
それが全部やり直しになるのだから、困ったものである。



大勢の手がかかっている試験問題であっても、このようにミスが出てしまう。
ましてや個人で作っている定期試験の問題はもっと間違いが出てもおかしくない。
もうすぐ僕の勤務校でも学年末試験があるが、出来るだけミスがないように、慎重に作らなければならない。



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