劇場版「鬼滅の刃」無限列車編~映画~

昨年公開された映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」。
現在もまだ上映中だが、すでに興行収入は394.4億円に達し、日本歴代興行収入1位の記録を更新し続けている。
LiSAの歌う主題歌「炎」は昨年末の日本レコード大賞を受賞。
今年に入っても、日本アカデミー賞において最優秀アニメーション作品賞・最優秀音楽賞・話題賞作品部門の3部門を受賞するなど、勢いは衰えていない。


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僕は映画史エッセイ「映画史探訪」を運営しているのだが、ここまで社会的現象となった作品を見逃すというわけにはいかない。
ようやく遅まきながら観に行くことが出来た。


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〈以下ネタバレ有り〉

「無限列車編」の物語は、「鬼滅の刃」のテレビシリーズの続きで始まる。
テレビシリーズの最後、主人公・竈門炭治郎らは大勢が行方不明となっているSL列車「無限列車」に乗り込む。
列車には既に鬼殺隊の柱・煉獄杏寿郎が乗り込んでおり、一方屋根の上では下弦の壱・魘夢が不敵に佇んでいる…。

この「無限列車編」というのは、原作でいえば全23巻のうち、7・8巻の内容を描いたものである。
つまり「鬼滅の刃」という長い物語の一部であるため、果たして1本の映画としてきちんと成立しているかどうかが僕には気がかりであった。
「無限列車編」はアメリカのアカデミー賞にはノミネートすらされなかったのだが、原因はやはり単独の作品として評価することが難しかったからではないか。

しかし、僕が実際に観た感想としては、1本の映画としても十分楽しめるものであった。
何よりもテンポが良く、スピード感があり、2時間弱の時間がもっと短く感じた。

炭治郎たちは苦戦しながらもようやく魘夢を討ち果たす。
だがそこに、新たな敵として上弦の参・猗窩座が登場する。
メインの敵役が終盤になって唐突に登場するという脚本は少々アンフェアな気もするのだが、杏寿郎と猗窩座の戦いは原作で結末を知っているにも関わらず手に汗握る迫力があった。
結局、杏寿郎は敗れ死んでゆくことになるが、その際に炭治郎たちに「心を燃やせ」と説く。
思わずうるっときてしまう。


原作と大きく違うのは、映画の冒頭で鬼殺隊指導者の“お館様”産屋敷耀哉が死んだ隊士の墓参りをする様子が描かれている点である。
お館様は、10数人の隊士の名前を呼びながら墓地を歩く。
無限列車編の直前の出来事として那田蜘蛛山での下弦の伍・累一家との戦いがテレビシリーズで描かれているが、この時10数名の鬼殺隊士が死んでいる。
となると、お館様が呼んでいた名前というのはこの時の犠牲者たちであったかと思われる。
ひょっとしたら累に切り刻まれたいわゆる“サイコロスステーキ先輩”の名前というのもこの中にあるのかもしれない。


映画版のラストは杏寿郎が死に、炭治郎たちがそれを悲しむ場面である。
原作ではこの後猗窩座が鬼の始祖・鬼舞辻無惨へ杏寿郎を葬ったことを報告するも叱責され、炭治郎たちへの復讐を誓う場面がある。
さらに杏寿郎の死を伝えるために煉獄家を訪ねた炭治郎が新たな決意をする場面に続く。
映画版の終わり方だと煉獄杏寿郎が主人公であるかの印象を受けてしまい、主人公であるはずの炭治郎がかすんでしまっている。
冒頭でお館様は「人の意志は受け継がれる」というようなセリフを語っているが、ラストでそれを炭治郎が受け継いでいないので、テーマもぼやけてしまっている。
1本の映画として考えるなら、やはり炭治郎の決意までを描かなくてはならないだろう。


とまあ、いろいろと批判的な意見を書いてしまったが、この「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は、素晴らしい作品であった。
まだ未見の人は是非とも一度観て欲しいと思う。
「無限列車編」のDVDが6月に発売される予定だ。
年内にアニメシリーズ第2期「遊郭編」の放送が決まっているため、それに併せてテレビ放映やネット配信もあるのではないかと予想される。
何はともあれ一度ご覧になって頂きたい。